文字サイズ: | | オリジナル

 フランス演劇界の巨人にアントナン・アルトーという人がいた。
 彼の言葉をもとに構築された哲学概念がドゥルーズ=ガタリが提唱した“器官なき身体”だ。
 主に女性的身体とされるものだが、より一層それを突き詰めたのがコミック『攻殻機動隊/士郎正宗』だ。

 安楽死にみるように、人の生命活動が医療の進歩と共に線引きが非常に難しくなっているが、ここでの(2029年)デッドラインとして、生身の身体機能は重要視されない。
 人はネットと直接連結された義体を有し、すでにサイボーグ化が日常となっているからだ。
 では、コンピューター同様に“記憶”が人の生を司る?
 (名作アニメ『カイバ/湯浅政明監督作品』ではそのような設定がなされている)
 司るのは英語タイトルにもある“GHOST”ということに物語上ではなるのだが、これが果たして“魂”なのか?“霊”なのか?との謎解きは作品内では特に解かない。

 同作品のアニメ化としては、劇場版/押井守監督作品『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』※同リニュアル版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0』『イノセンス』。
 TV版は、神山健治監督作品『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』というラインナップとなる。

 この夏、世間は、またしても“スタジオ・ジブリの夏”と化しているが、筆者にとっては、6月に公開された『攻殻機動隊 ARISE』すなわち“Production I.Gの夏”なのだ。

 新劇場版『攻殻機動隊 ARISE』では主人公、草薙素子は公安9課にはまだ属しておらず、義体維持管理規制にのっとり、軍(陸軍特科501機関)の管理下にある。
 完全義体で高度な戦闘能力を有す素子の身体は個人での維持が難しいため、軍から自由を束縛されつつミッションを遂行しているのである。

 他、設定の新鮮さでは、素子の誕生に関し、神山版では飛行機事故により少女時代にサルベージとしたが、今回の黄瀬和哉版では胎児として、脳のみのサルベージとなる。

 同シリーズに馴染んだ者達は、当初、声優の総入替えに戸惑う。
 そして相変わらずのタームの複雑さ。
 “自走地雷”の漢字表記が脳内で分かるまでに筆者は相当な時間を費やしてしまった。
 逆にこの複雑さが“攻殻”を繰り返し見てしまう理由なのかもしれないが。

 注目すべきキャスティングは、当代きってのサイエンスフィクションの書き手、冲方丁が脚本、そして、どはまりなコーネリアスの音楽。

 ヱヴァンゲリヲン新劇場版の次作の公開が決まらない今、全4作を予定している『攻殻機動隊 ARISE』が筆者のけだるい日常の一条の光明なのだ。

 


新世界8月店頭展示ポスターⓒエンドウソウメイ

2013年08月14日