文字サイズ: | | オリジナル

出演/南流石(ヴォーカル、ダンス)、EBBY(ヴォーカル、ギター)、エマーソン北村(キーボード)、西内徹(サックス、フルート)、服部将典(ベース)、スティーブ エトウ(パーカッション)、関根真理(パーカッション)
ゲストヴォーカル/こだま和文(ヴォーカル)、桑原延享(ヴォーカル/from Deep Count)

取材、テキスト/エンドウソウメイ
写真/門井朋

_DSC5375
こだま和文

先天的な病理
 発作性上室頻拍(WPW症候群)。新春の還暦ライブ以降、こだま和文が活動休止に追い込まれた病気の正式名称だ。
 筆者も昨年末、実際にその症状が起こった時に同席していた。激しい動悸が襲い非常に苦しそうで見ていて辛かった。
 実はこの症状は既に18歳頃から頻繁に起こり、更に遡ると先天的なものだという。
 なんでも普通の人間は持っていない心臓への神経組織があることで、その不要な回路がループし動悸が起きてしまうのだ。
 以前は独自の呼吸法を駆使し、自力で発作を止められていたらしいが、加齢、ストレスが加味され、いよいよ止まらなくなった。
 今回の活動休止中に行われたオペは、その神経組織を焼き切るというものだった。
 さて、現在のコンディションはもとより、現状の活動最後となった恵比寿リキッドルームでのライブ前後の体調異変に関する裏話からまずは訊いてゆくことにしよう。

こだま和文(以下こだま):還暦ライブの前々日から動悸が止まらなくなってね、ライブは薬で抑えて臨んだんだけど……、

エンドウソウメイ(以下エンドウ):そんなバットコンディションとは別に、あの日のアクトは各方面大絶賛でした。

こだま:皮肉なもんですよ……。

エンドウ:プレイは勿論、MCも、「非常に丁寧にされているな」との感想を私は持ったのですが。

こだま:それはあったかもしれないな。
でも、ある人は、「いつもより冷たい感じがした」って言うんだよね、演奏が。

エンドウ:理知的って意味でしょうかね?

こだま:だから、こうすりゃ〜、あぁ〜言われるし(苦笑)
「新世界」なんてワンマンだから“絶対的自由”ってのがテーマだから。でも、演奏に支障をきたすようなことはない訳だよ。まあ、かねてから、「お酒を呑むから、どうの、こうの」って言われているのは分かっているんだ。「やっぱり呑まないで演奏した方が良い」とかさ。思い当たるふしもあって反省もしてるんだけど……(苦笑)
でも、ワンマンに関しては全責任が自分だから。だから、MCにしても、「これが今の僕です」ってことだよね。それが出来るのが「新世界」じゃないの?

エンドウ:そうですね。ドキュメンタリー的と云うか?

こだま:でも、あの還暦ライブは自分が祝ってもらう立場でしょ?プロデューサーのカミヤン(上村勝彦氏/当日オペレーションも担当)にも大変お世話になって。いろんな方々への配慮ね。「自分だけのイベントではない」という。それと、「いよいよ心臓の手術をしなければならない」という状況ね。それに照らし合わせて、「酒を呑まない」としただけのことなんだよ。
そんな時に限って、そこそこまともな演奏が出来て、「やっぱり呑んでないほうが良いじゃないか?」って話になっちゃうんだよな(笑)

エンドウ:確かに、そうなりがちな一連の流れですね(笑)

こだま:僕自身は、あのステージは大変だったんだよ。身体をキープするだけで精一杯。
前日の夜から当日の午前中まで演奏のキャンセルも考えていたんだ。
最悪の場合、顔を出すだけっていう態勢もとってもらって。

エンドウ:そんな舞台裏があったんですね。

_DSC5129
オペはライブ現場と一緒
 還暦ライブから約2ヶ月後の4月9日、5名の医師チームによる2時間に及ぶカテーテル・アブレーション治療を受ける。再発の可能性も残っているとはいえ手術は成功。
 そんな中、今回のオペでこだま和文は最新医療に深い感銘を受けたという。

こだま:カテーテル・アブレーション治療って、「簡単だ」って皆言うけど、自分でシュミレーションすると正直怖かったんだ。
 車椅子で処置室に入るよね、手術台に乗せられると、テレビモニター?要は身体の状況をリアルタイムで映し出すディスプレイが5つくらい僕の横に並んでいる訳。

エンドウ:SF映画の世界ですね。

こだま:そうそう。その部屋自体は雑然としているんだけどね。
一日4人くらいは平気で手術するらしいんだ。
で、何に感動したかっていうと、要するにバンドみたいだったの。オペって“究極のライブ”だと思った。

エンドウ:ふぅ〜ん、成る程。

こだま:つまり、取り返しの出来ない、失敗が許されない一回きりの“究極のライブ”なんだよ。

エンドウ:やはり発想がミュージシャン的ですね(笑)

こだま:麻酔担当、ディスプレイチェックの人、オペレーション?コンピューターのプログラマーみたいな医師がいて。点滴の薬を常にチェックする人。助手、実際に穴を開けて管を通してゆく医師。
手術が始ると、「今どこの処置をしている」ってのは分からなくなって、ザァ〜といきなり動き出すと云うか、その5人でイントロを始めるようにそれぞれのパートを担当する訳だよね。
処置室には僕の心臓の同期音が常に流れているんだ、かなり大きな音で。

エンドウ:ピンク・フロイドの『狂気』みたいですね(笑)

こだま:緊急の時のあるでしょ?ピッピッとか。あれのもっと大きな音。
デゥ〜ンデゥ〜ンデゥ〜ンって俺の鼓動でビートが出ている。

エンドウ:どこにいても発想がミュージシャンですね(笑)

こだま:5機のディスプレイ造影機は、「使ってないの?」って感じでビニールが被せてあるんだけど、5人が動き出すと同時に縦横無尽に動きだすの、3Dみたいに。謎の照明器具に思えたよ。

エンドウ:正にライブ(笑)

こだま:手術中、数回激痛もあったんだけど、5人の動きや同期音、ディスプレイのロボティックな動きが痛みに集中する意識を拡散してくれた。
室内の音もノイズ、同期音が混ざった、ある種の現代音楽?いや、テクノミュージックみたいな。

エンドウ:ガハハハハ(爆笑)
流石の比喩です(笑)

こだま:昨日、術後初めての検診だったんだけど、そのことを言ったら、「それが怖いっていう患者もいる」っていう訳。僕は逆なんだな、感動したんですよ。
前述した部分も勿論なんだけど、僕の一個の小さな心臓のためだけに、もの凄いライブをやってくれたことに感動したんだよね。涙が出るくらいに。身体大事にしなきゃって。

_DSC5066
じゃがたらとは
さて、現在療養中のこだま和文のライブ現場復帰が遂に決まった。
5/22(金)、5/23(土)「じゃがたら新世界2015/Reborn of a rebel song.」
 図らずも、旧友江戸アケミの楽曲をヴォーカリストとして歌唱するレアアクトが復帰戦となる。
 追体験世代も巻き込みそうな今回のライブ。まずは単刀直入にこだま和文が思う“じゃがたらとは?”から復帰に向け語ってもらった。

こだま:僕の今回の心臓の手術にこじつけるようだけど、執刀チームと同じようにさ、アケミが心臓だとしたら、ホーンも、コーラスもいて、ダンスもあって、あの大所帯全てがアケミって心臓に集中して常に活動していた訳でしょ?しかも、自分達の生活の安定とか、そういうことはあんまり考えずに、兎に角、アケミのいるじゃがたらってものを突き詰めてゆく。それを考えるとじゃがたらって一つのバンドなんだけど、凄く大きな豊かな音楽性があったなって時が経つ程に思うよ。
そこにはotoちゃんもいてさ、EBBYがいて、ナベちゃんがいて、南がいて、篠田とかホーンがいて。トロンボーンの村田陽一君なんて、今をときめくプレイヤーだよ。渡辺貞夫さんの全アレンジをやったりとかさ。凄く優秀な人達を集めて、殆どパーマネントであるかのようにアケミが亡くなるまでキープしていったんだもんな。otoちゃん、オリジナルメンバーのEBBY、ナベちゃん。テイユウとかのエナジー、つまりアケミっていう心臓に集中する皆のエネルギーがあれだけの素晴らしい音楽を産んだんだと思う。

エンドウ:素晴らしい解析から急にベタな質問で恐縮ですが、じゃがたらの楽曲ではどの曲がお好きですか?

こだま:今回自分が歌う曲(あっさりと)

エンドウ:ハハハハハ(笑)

こだま:「もうがま(んできない)」と「ある平凡(な男の一日)」(笑)

エンドウ:後は?

こだま:アルバムだと『それから』が好きだね。
初期も勿論好きだけど。

エンドウ:ライブの中身に関する質問にいかせていただきたいと思います。
今回の編成で大きく目を引くのが、リズム隊がドラムレスな、ダブルパーカッション&ベースという点だと思うのですが、率直なご感想お訊きしたいのですが。

こだま:リハしてみないと正直分からないけど、それはそれで楽しみですよ。

エンドウ:キャスティング的にはいかがでしょうか?

こだま:ノブ(桑原延享)は歌唄うんだろ?

エンドウ:ご自分の詩でやられるようです。Twitterを見るとアケミさんへのアンサーソングになりそうな気配です。

こだま:ああ、ポエット的な?良いね。
俺、ノブが出てくれるのは凄く良いと思う。
楽しみな面子だね。

oto
otoからのメッセージ

エンドウ:先ほど、こだまさんにもotoさんからのメッセージを転送しましたが、ビデオ出演でotoさんも顔を出して頂けるようです。
一読されていかがでしたか?

こだま:otoらしい、愛情のある。でも、もっと、じゃがたらに関しては深い想いがあるだろうにと……。

エンドウ:otoさんの新刊「つながった世界〜僕のじゃがたら物語〜」はもうお読みになりましたか?

こだま:まだ途中。
otoちゃんは根っこにいつもじゃがたらがあるんだろうけど、東京を離れてさ、今までotoちゃんがやってきた農業?環境に関することだとか、そういうことが、じゃがたらをやっていた時以上に、もの凄くotoちゃんを大きくしているんだろうなって、本を読んでも思うし……、ちょっと無責任な言い方になっちゃうけど、……、良い生活をしているんだろうな。
都市生活者ではなく……、っていうのは感じますよ。なんかotoちゃんの更なる大きさを。
元々、愛情の深い人だから、その愛情を生かす生活をされているなと。

akemimyu-to
江戸アケミwithミュートビート@東京ソイソース

じゃがたら、ミュートビートがいた伝説の東京ソイソース
 「東京ソイソース」。若い世代には耳慣れない音楽タームかもしれないが、80年代以降の、俗に云うクラブイベントの雛形となった「東京ソイソース」という画期的なイベントがあった。その中核をなしていた4バンドは、s-ken & ホット・ボンボンズ、トマトス、そして今回のライブの主人公であるじゃがたら。更にこだま和文が牽引していたミュートビート。
 このイベントの画期性とは果たしてどこにあったのだろうか?
 そして、このイベント内でエポックメーキングなカップリングが起こった。「江戸アケミwithミュートビート」!
 その経緯を当事者こだま和文にこの機会に訊かない手はない。

エンドウ:当時、ソイソースの4バンドの間にライバル意識のようなものは存在したのでしょうか?

こだま:ない(あっさりと)
ある時期から、じゃがたらってバンドを尊敬していたしね。
僕がイアン・デューリーをリスペクトするように江戸アケミって人をさ〜。
ソイソースに限って言えば、s-kenとotoちゃんのコーディネートの中に“変なライバル意識を持たない”ってことがまずは前提にあったと思うんだよ。
そういうちまちました、「俺等の方がさ〜」とか。そんな小さなことは完全に越えてるっていう。そんなどうでもいいことは気にしないために選りすぐった、

エンドウ:4バンド。

こだま:そうだよ。

エンドウ:それ以前のロックシーンの対バンって概念は、なにか“闘い”に近いですものね。

こだま:ソイソースにはそれが全然ない。
つまり、4つで一つの部分と、4つで其々ってバランスが凄く上手くいっていたと思うよ。
イベントって思った時、誰かが企画してバンドが集められて。でも、バンド其々は何か腹に一物を持ったような。表向きは、「僕等、一つに繋がってるんだよね」みたいなイベントが沢山あった訳だ。それって気持ち悪いじゃん。
ソイソースはそうじゃなかった。其々勝手だし、しかも、誰もお茶の間まで知名度は浸透していない。
otoちゃんとs-kenが、「兎に角、この4つでやったら良いと思うんだよ」と。図らずも恵まれた4バンドだったんだよ。

エンドウ:あと、ゲストもその後のシーンに大きな影響を及ぼす方々が沢山出演されていました。
いとうせいこうさん、ランキン・タクシーさん、タイニー・パンクス、

こだま:ECDとか。自然に繋がるよね。無理矢理なものではない。
そこにインクスティックがあったり。いろんな形で協力してくれる人達がいて。比喩が正しいか微妙だけど“創る時代”と云うかさ。あんまり業界がシーンに入り込んでない時期だよね。
otoちゃん、s-kenの拘りって、「お前等、本当に音楽好きなのか!?」っていうことだったんだと思う。
音楽が好きっていうのは、つまり、いくつかのバンドが出るイベントがある場合、結局はトリのバンドが目当てで、それまで退屈そうにしていて。「そうじゃないだろ!」っていう。
ソイソースで例えれば、トマトスが好きな人は、ミュートビートのある面を好きかもしれないし、その2つに興味があるならじゃがたらだって音楽的に響くだろ?当然s−kenのやっていることもそうだし。
でも、其々が、「オリジナルだろ!?」っていうことだよ。
それを分かって欲しいってのが、otoちゃんとs-kenの当時の気持ちだったんじゃないかな?

エンドウ:今にして思うと奇跡的な組み合わせでしたね。
奇跡と言えばもう一つ。otoさんの新刊でもアケミさんの音楽活動のハイライトシーンとして綴られている“江戸アケミwithミュートビート”ですが、これはどんな経緯で実現したのでしょうか?

こだま:あれは僕が誘ったんだよ。
その時のことはよく覚えているけど、「アケちゃん、なんでもいいからミュートに乗っかってアジってもらえないかな?」って誘ったら、「おお、良いよ」って。
「曲はリハーサルでやっていた、あの曲(『Organ’s Melody』)で」。「リクエストがあれば曲変えるけど」と。アケちゃんは、「いいよ、あれでやるよ」って。それで、「じゃ〜本番よろしくね」って。
了解はもらったんで、バンドには、「アケミがフリーでトースティングするから。合図は俺が責任を持つ」と伝えた。松永なんて、「やばいじゃん!」なんて(笑)

エンドウ:歓迎の意として?

こだま:勿論だよ。
ソイソースってそういうことが出来る空気だったんだよ。

エンドウ:あれ映像が残っていて本当に良かったですね。

こだま:貴重だよ。
過去、アケちゃんをそういう形で誘うってことなかったんじゃないかな〜?
あの時は急激に僕とアケミが親しくなった時だから。じゃなきゃ〜、あの人に声掛けられないよ。もう、ピリピリしていて。
楽屋で気楽にアケミに声を掛ける人って、じゃがたらの初期からの昔ながらの人達だけ。何かを頼むなんて出来ないよ。
EBBYとかもそうだよ、ナベちゃんも(笑)。あのバンドは其々(イアン・デューリー&ザ・)ブロックヘッズみたいなもんじゃん(笑)ノーマン・ワット=ロイ(ベース)に、「ちょっと弾いてくれない?」なんて言い難いじゃん(笑)
しかもオリジナルな強烈なじゃがたらの音って、こっちはガンガン知っている訳で。

エンドウ:逆に、こだまさんがじゃがたらサイドから誘われたことはありましたか?

こだま:僕がじゃがたらを知ったのはotoちゃんだから。
otoちゃんからホーンで誘われたことはある。トランペットの吉田哲(治)ちゃんがいるのにもかかわらず、「こだまさん、『TANGO』で吹いてよ」って。その愛情は嬉しいよね。

_DSC5301
復帰に際しファンの皆様へ
 逸話も含め、じゃがたらに関し深度深く語ってもらった今、いよいよ活動再開に際し病状を心配していた多くのファンにメッセージをもらい、この項を締めたいと思う。

エンドウ:では最後に、体調を心配していたファンの皆様に活動再開に関してのメッセージをお願いします。

こだま:心配をおかけしました。励ましありがとうございました。僕の心臓の手術後、図らずも初めてのライブがじゃがたらの歌を唄うことで始ることとなりました。
まずは歌から復帰してゆきますのでよろしくお願いいたします。

エンドウ:本日は療養中のところお時間を頂きありがとうございました。

 こだま和文しか語れないじゃがたら伝承。こだま和文だから語れるじゃがたら秘話。
 それは今回、トランペットではなく歌となって旧友江戸アケミの魂に同期する。
 ダブ・マエストロの復帰ライブを絶対見逃すな。

_DSC5356 (2)
国立「シュベール」にて取材

5/22(金)、5/23(土)「じゃがたら新世界2015/Reborn of a rebel song.」

両日とも
Open/19:00
Start/20:00
料金/予約:4860円(税込)
※85名限定
※入場時別途ドリンク代必要となります。
●チケットのご購入は
5/22→http://peatix.com/event/84881
5/23→http://peatix.com/event/84886
注)当公演は「新世界」への、ネット、電話でのご予約は受け付けておりません。お気をつけ下さいませ。

2015月05月08日